KGM「人権週間」
「校長の小さなつぶやき」(28)(全校朝会「人権週間」の話から)
‥‥‥人権週間2週目です。今週は特に1、2年生のために、のび太君とジャイアンに登場してもらいます。
ある日、のび太君は公園でシャボン玉を飛ばして遊んでいました。のび太君、自由に遊べて楽しいです。するとそこに! ジャイアンが現れました。
「なんだぁ~、のび太のくせに、シャボン玉なんかで遊んでるぞォ!」
ジャイアンはのび太君のそばに行って横に立ち、のび太君のシャボン玉を吹く管に向かってうちわをあおぎました。うちわの風で、ふくらみかけたシャボン玉が揺れてゆがんで、飛ばずに壊れます。ジャイアンはそれが面白く、ゲラゲラと笑いながら続けました。
のび太君は言いました。
「ジャイアン、やめて! 楽しく遊んでるんだから。」
ジャイアンは言いました。
「のび太はシャボン玉を吹くのが楽しいんだろう。
おれは、のび太のシャボン玉を壊すのが楽しい。
お互いに楽しいからいいじゃんかよォ。
だいたい、のび太のくせに、シャボンだ~ま~?
そんな遊びしかできないのかよ!」
さて、これいいですか?……(「ダメ~!」という大きな声)
でも、ジャイアンもシャボン玉壊しで自由に楽しく過ごしているんですよ。ジャイアンはジャイアンで楽しいからいいですよね?‥‥‥(「ダメ~!」たくさんの返答)
そう、その通りです。その人が楽しんでいることを邪魔するのはいけませんよ。それも、邪魔するだけじゃなくて、邪魔することを楽しむなんてダメですよね。
これは「いじめ」と言えることです。そうです、「いじめ」も人権の問題なんです。
それからジャイアンの言い方に大きな問題が一つあります。気づきましたか? そうです、なんで「のび太のくせに…」って言うんですか? のび太君はのび太君で、何かまずいんですか?「のび太のくせに」の「くせに」って何? どういうこと? 皆さんも自分の名前に「○○のくせに」って言われたらどうですか? 嫌な言葉ですよね。何で言うんですか? 傷つける言い方はいけませんね。いやですよね。
もう一つ、のび太君の話です。
ある日、のび太君が縁側でシャボン玉を飛ばして遊んでいます。すると、大きな大きなシャボン玉が隣の家の窓にスーッと吸い込まれる様に入って行きました。のび太君は、それを見て楽しくなりました。それで、窓の方に向かって大きなシャボン玉を飛ばし続けました。
ドラえもんはそれを見て言いました。
「まずいよ、のび太君!
シャボン玉を人の家に入れちゃダメだよォ」
すると、のび太君は、
「え~っ? シャボン玉だし~、きれいだし~、
隣のお家の人も楽しいよォ~、アハハハハ。
最初はびっくりするけど、喜んでるよォ~。」
隣の家の空いている窓の部屋には、赤ちゃんがベビーベッドの上に寝かされていました。赤ちゃん顔のそばでシャボン玉が壊れます。壊れたシャボン液が霧のように顔にかかります。さあ、大変! シャボン液が目に入ったら、どうしよう…。
自分がいいと思うことは相手もいいと思う、きっと喜ぶだろう、かなぁ。自分がいいと思うことなら何をしてもいいのかなぁ? 他の人の迷惑になることもある。困るということことが見えないこともある。自分がいいと思うことを、いいことだと決めつける。考えなきゃいけません。これも人権の問題と同じなのです。
最後は中学年以上の人に向けてのお話しです。
先週、世界人権宣言は第二次世界大戦から少し後の1948年に定められたと聞きました。第二次世界大戦では「ユダヤ人狩り」とか「ホロコースト」とも言われるとても悲しい出来事もありました。ユダヤ民族の人々は、「ユダヤ人だから」という理由で捕まえられて殺されたのです。虐殺といいます。
『アンネの日記』という本があります。ユダヤ系ドイツ人の13歳の少女アンネとアンネの家族は捕まらないようにとドイツからオランダに引っ越しました。ある建物の奥に隠れ家をつくって隠れて生活しました。
日記の中で13歳のアンネは、いつか隠れ家を出られる、ユダヤ人だからという理由で殺されることのない日が来ると信じて、こんな大人になりたい、こんな人生を生きてみたいと、夢を語ります。アンネは13歳の女の子らしい気持ちも書いています。
でも、2年で見つかってしまいました。捕まえられて、大人になれずにアンネ一家は殺された。私は子どもの頃この本を読んで涙が出ました。なんで殺されるの? 日記の中に閉じ込められて終わったアンネの心。砕かれたアンネの夢、閉ざされたアンネの自由、そして奪われた命。どうして命を奪われ、自由に生きることができなかったのでしょう。人の自由を奪い、命を奪う、人権を無視する最悪の行為です。
お話はここまでです。
最後にまとめます。
人権という言葉は難しいです。人として、自由に幸せに生きる権利のことを言います。そして、その人権は、いつも語られている「お互い、自分のことのように思うこと」、「隣人を自分のように愛すること」から生まれる態度と行動でできることなのです。
みなさんも、毎日、お友だちと「お互いを自分のことのように思うこと」を第一にして過ごしてほしい。のび太君、ジャイアン君の話を思い出してみてくださいね。