未来に繋がる力を育む学び
校長の小さなつぶやき(37)「未来に繋がる力を育む学び」
◆5月31日(火)の『校長の小さなつぶやき(35)…関東六浦小の「『のびる』を伸ばす」』で、自己効力感(自己可能感)と非認知能力に触れました。六浦中・高(校長兼務)の学校説明会や中学受験対策『しゅと模試』の会場校教育講演などでも幾度かお話してきました。度々いただいてきた質問…「どうすれば非認知能力は身につきますか。」小学校の教育への考え方について、私の教育観を無責任に言い放ってきたようで申し訳なく、この場を借りてそもそも論として少し詳しくお話します。
◆「認知能力」と「非認知能力」。「認知」という言葉は、生活に支障をきたす記憶力の減衰や思考力の低下の状態を表す「認知症」でも使われていますから、「ところで認知って何?」ともなりますね。教育で言われる「認知能力」とは、幼児期から行われる知能検査や学齢に応じた学力テスト(アカデミック・スキルも試される)などで、「数値化して表せる」理解力や論理的思考力、記憶力などを指します。一方で「非認知能力」とはざっくりと言って、測定できない「数値化が難しい」能力を指しています。
◆「非認知能力」。まず学習面で言えば、習得する知識や技能自体ではなく、学びの活動に影響力のある力です。何かに取り組む際の内面の状態。それに対する自信や根気などが端的なところでしょう。一方で行動や性格の面から言うと、共感力、協調性、自制心。自己抑制的に他者との関係を平和に保とうとする力です。そしてやり遂げようとする気持ちとか忍耐力、持続力を指します。これらは、他者との協同での日常生活や社会的活動などで重要な力、その子の性格・行動特性、人間力です。
◆ですから非認知能力は、学習活動や練習事においても友だちとの遊びにおいても、その状況の中で重要な向上的な心持ちで、社会性や安定性、信頼性に関わる人間としての基本的な力です。子ども園や小学校の時代は人生を歩み出したばかりですから、この非認知能力の育成がとても重要です。その後の行動力や行動特性、性格的特徴に影響します。学びの活動では必要な持続力や自己効力感(=自己可能感。自分もできるかもしれない、きっとできる・・・という気持ち)に繋がります。この力の育ちには環境づくりが重要です。親の関わり方と学校の教育内容や教育姿勢など、本人をとりまく環境です。
◆誤解を恐れずに言います。遊ばせましょう。興味を支援する。それが危険ではない限り、こどもの関心を阻害しない。大人は安易に何でも自分の価値観で押し付けたり支配したりしない。仮に失敗しても前向きに評価し、否定的な声掛けはしない。途中でも努力している様子を褒める。たとえ期待するレベルにない状態でも経過を適切に褒める。選択をしなければならない時は「自分が決める」という経験をさせる。結果としての成功・不成功に関わらず「自分で決めた」という経験を肯定的にさせる。
◆小学校の学びは基礎の基礎。基礎的アカデミック・スキルの習得や習熟です。しかし、そのために授業でも活動でも、まるで養鶏のように給餌するような知識の詰め込みやドリルで、その成果に単純明快に一喜一憂する。その方法に大きく傾注するのは如何なものか。そういう学習観や学力観が昂じると、子どもの非認知能力の育ちや自ら意思を決定する力は阻まれます。子どもはいつしか主体的な行動力の乏しい人格を形成していき、親や周囲に忖度する態度(の取り方)の方を伸ばしていきます。
◆従来の定型的な知識・技能の吸収を否定しているのではありません。自分で自分の目標を立てて進もうとする気持ち(自己効力感や探究心)を支援すること。適切なレベルや環境(学びの個別最適化)を整えること。孤独ではないぞ!と自信をもって未知の社会に進める気持ち(主体性の助長)を推すこと。この三つが重要で、六浦小モデルの考え方はここに立っています。「未来に繋がる力を育む」学びです。