自然学校が子どもたちを待っている
校長の小さなつぶやき(22)「自然学校が子どもたちを待っている」
「自然学校が子どもたちを待っている」
例年になく暑い夏です。セミは、「m~暑いぞ~zz m~今年は~zz m~暑いぞ~zz 」といつもより大きく鳴いていると感じます。それは気のせいでしょうか。セミは昆虫、変温動物。体温は気温と同じ。変温動物は自分の生命活動にちょうど良い体温を自分では維持できません。ですから気温依存で、生命活動に適温帯があります。
そうすると、鳴くのにも気持ちがよい気温域ってあるのでしょうか。もし、今年セミの鳴き方が大きいというのが正しいのであれば、この暑い夏は鳴きやすい気温ということなのでしょうか。それにしても、気温に左右されるというのはどんな気持ちなんでしょうね。
一方、人間は恒温動物。体温の調節能力がある動物。気温の変化に関係なく、一定の体温を管理するシステムを持つ。身体の中を定温にして生命活動に必要なエネルギーを作り、生命活動を安定的に維持する。
人間の場合、さらに暖房や冷房の知恵と技術があるので、外的環境も都合にあわせて適宜に作り変えます。身体は高機能で知恵と技術もすごい。しかし、それが地球環境にとって弊害となっているのか、とは考えたくない異常な暑さです。
哺乳類と鳥類が恒温動物であると学んだ時、凄い機能を持っていると感動しました。ただ、体温調節の機能は成長にしたがって整っていく。機能は時間とともに発達する。人間は哺乳類の中でも高度な哺乳類で、哺乳類に共通のホメオスタシスの一つの体温調節をはじめ、他の種にはない色々な機能を持ちます。純粋に不思議を感じました。生物の先生が、「どうしてなんでしょうねぇ…不思議を探しなさい、知りたいことを追究しなさい」と、いつも話しておられたことを思い出します。機能が高度に発達するためには時間がかかる。また、「知恵」は身体機能ではありませんが、人間らしい知恵の習得には時間が必要です。
以前勤めていた学校の業務の中で、乳牛(ホルスタイン)の出産に何度か立ち会う機会がありました。敷き藁の上、湯気が匂い立つ。初めて実際に見る光景でした。怖いほどの不思議と感動。そして生まれた仔牛は一時間もしないうちに立ち上がる。ヨロヨロ、ガクガクと…ですが、必死に立ちあがりバランスをとります。立ちあがるまでの時間が人間の子どもとは比較にならない。あっという間です。真っ黒な瞳が輝いている。見ている物に何を見ているんだろう、何を思っているんだろう。誰もが神秘を感じる瞬間です。
仔牛は、母牛と離されて育てられます。哺乳の期間は3カ月程度前後です。あっという間に育ち、メス牛の場合は人工授精で13~16カ月で妊娠します。生後23~26カ月で出産します。あっという間に成牛になります。その早さは人間によって乳牛に改良されてきたからでしょうが、私はその成長の実態を知って、反面的に、「人」が成長に要する時間について深く考えさせられました。なぜ長い時間を必要としてまで知恵を習得するのか。生物学的にではなく、哲学的に真に考える機会でした。
人の成長には時間が必要です。ただし、時間だけではなく、その中で高度に成長するために必要な学びと、学びに繋ぐ確かで豊かな経験が必要です。
実際に見る、触る、そこから感じる、そして気づく。そういう経験です。そうして、しっかりと座学に裏打ちされていく知識に続く。知恵は平和を創る知恵でありたい。
学びを深めてゆく上で知識や技能の基礎基本の習得は大事です。ですが、詰め込みだけが教育ではありません。子どもたちは新しい時代と大きく変わる社会に向かうからこそ、功利的に学ぶのではなく、人間らしく考える考える力の基礎を体得することが必要です。新しい気づきが、未来を創る力になります。小学校は、視野と視角を拡げる「小学校の学び」をする学校であるべきと考えます。
9月5日から自然学校が始まりますが、5年生の黒姫と6年生の清里から、学年順に大きな体験が待っています。未来の学びに豊かに繋がる「小学校の学び」を進めます。