「子ども自身が可能性を伸ばす・・・それを支援することが何よりも大切」
校長の小さなつぶやき (10)2022年8月27日
「子ども自身が可能性を伸ばす・・・それを支援することが何よりも大切」
六浦小学校は、小学校段階の教育をこんな風に考えています。小学校の教育では「何を覚えたか」という観点にとどまるのではく、「何ができるようになったか」や「何をすべきと考えられるようになったか」という観点が大切です。子ども自身が、自分から自分固有の力を引き出すことを支援すること。将来に必要な力の大小はその観点での教育によって決まると考えています。
人間社会は、どの時代も問題や課題を抱えてきました。今日も同じです。しかし、それらを解決する力は、待ちの姿勢で発揮する力ではなく、自ら気づいて目標に向かって動く力、自分から動かす力です。もちろん、そういう力は豊かな知識や技能に裏打ちされるものです。しかし、知識や技能そのものだけの習得がゴールではありません。
文科省は今回の学習指導要領の改訂で、未来は「予測が困難な時代」と明言し、子どもたちには「変化を前向きに受け止め、社会や人生を、人間ならではの感性を働かせてより豊かなものにしていくことが期待」されていると語っています。「『知識及び技能』『思考力・判断力・表現力など』『学びに向かう力、人間性など』の3つの柱からなる『資質・能力』を総合的にバランスよく育んでいくこと」を目指すと明確に述べ、新しい学び方の必要を説いています。しかし、これまでの見方では明解ではない要素が多く、まだまだ理解されていないと感じるところです。
東西の壁の崩壊から急速に深化したグローバル化に加え、いま急加速する技術革新によるスマートフォンの普及。それに伴うコミュニケーションや商業・サービスのあり方の大きな変化。社会全体の大きな変容・・・それらへの備えに繋がる学び方の必要。バックボーンとなっている中教審は、これまでの世代が経験したことがない変化の未来への準備について、危機感をもって鋭く訴えました。学校はあらためて教育のあり方を考えなければなりません。今までのように強制的に引っ張って伸ばすことで、逆に芽を摘んでしまう危険があることを覚えるべきでしょう。
六浦小学校は新学習指導要領の以前から、文科省が説く3つの柱をバランスよく育む教育を展開してきています。六浦中・高の校長として丸8年間、六浦小出身の生徒を見てきました。大きな特徴の一つは、バランスのよい発達と言語化する力の習得だと感じています。他者の思いを聴き、自分の心の中にある思いを表し、関わりの中で適切なコミュニケーションをとる力。六浦小の教育環境の成果だと感じてきました。
定形型の知識や技能の習得は大切です。が、量と正確さと速さの尺度で学習の力とする狭い価値観は過去のものです。ましてや、その価値観で自分の価値を決め込むという感覚に至っては悲しい限りです。「できない」と自尊感情を低く抑えがちになり、自己肯定感を育てられず、次へのチャレンジを生まないスパイラルに陥る。その例を社会はどれだけ経験してきたのか。むしろ、知識が不完全であっても、調べてつなぎ合わせて新しい力に変え、その力を課題の解決に生かす。その力を引きだすことが大きく変わる時代に必要な教育です。変化にはそれに対応する力が必要なのです。ダーウィンは説きました。It is not the strongest of the species that survives, nor the most intelligent that survives. It is the one that is most adaptable to change. (生き残るものは最も強い種でも、最も知的な種でもない。最も変化に適応できる種である。)
子どもたちの成長をじっくりと、時には忍耐で、やさしく見守りたいと思います。