校長の小さなつぶやき
2025.05.27

瞳の輝き

校長の小さなつぶやき(41) 「瞳の輝き」 

5月は新しい葉の緑が深みを増していきます。学校も同じかもしれません。新しい学年に進級してみんな若芽です。そして新入生を迎えて1か月。行事で新年度の新しい色が深まっていきます。

5月1 日(木)一年生歓迎遠足

27 人の新 1 年生が一人ずつ、2年生以上6学年全学年で、縦割りの 7~8 人のグループの中で大切に守られるようにして海の公園まで歩いてきました。

ほっこりとさせられる光景があります。学年が同じ子どもたちの遠足とは違います。一緒に歩いていますが、歩幅が違って足取りのリズムも歩数も速さも違う、背丈も凸凹の子どもたちのまとまり。その27のまとまりの、まとまり毎に一緒に歩く光景には何とも言えない微笑ましさがあります。そうしてテクテク、どの子も瞳をキラキラと輝かせながらゴールのテーブル(校長と教頭のいる最後のポイント)までやってきました。

何となく1年生の傍にいて、テーブルに一緒に近づくのが2年生。とは言っても去年の1年生…です。今年の1年生に、「ボクもここで名前を書いてもらったんだよ」と教える。グループの中にうずもれているようにしてたたずんでいる1年生を指して、「ハイ、1年生の○○さんです!」と私に紹介する。姉、兄ぶりを発揮する眼がキラキラ、満面でニコニコしています。

3年生から5年生もそれぞれニコニコ、さらに慣れた感じでの年上ぶりが見られます。3年生の一人はテーブルに両腕をつき、校長が1年生の名前を書くフェルトペンが動くその直前に、実況中継をするかように、「校長先生は字が綺麗なんだよ」と解説者の気分で得意げです。

6年生は、どのグループでもちょっと遠巻きにニコニコしながら立っています。一人が呟くように「いいなァ、ぼくたちには無かったからなぁ」。コロナで遠足はなかった…んだあ。「私も名前、書いてもらいたいなぁ」ともう一人。いま眺めるシーンの中で、ふと一年生の自分を思い出したのでしょう。でも、二人は爽やかに微笑んでその眼差しは一年生へ。そして、それを澄んだ瞳で見上げて聴く4年生。関わり合う、見合う、感じ合う…縦割りの活動はとても教育効果が高いと感じる場面が散りばめられています。

 

5月24日(土)第73回運動会でした。

本校の運動会は本当に学校全体での催事という一体感があります、手前味噌のようですが…。しかし、教員生活40年で初めての小学校の校長で、4回目の運動会。まだ客観的に語っていると思ってください。4年生以上の全員(141名)が運動会の準備のための前日までの作業活動10種の業務にかかわります。そして当日は運動会プログラムの速やかな進行のために、4年生以上の全員が自分の出場しない種目の運営になんらかの形で関わります。その業務種類は11種です。

この4年生以上での係活動は全てが縦割りでの作業です。学び合いの場なのです。教師はもちろん語ります。作業の意味を話し、責任を自覚させ、関わっていることでは義務感では無く自己効力感を感じさせるように適宜の指示を出します。これが本校教員の凄さです。…が、同じくらいに凄いのは児童同士の教育力なのです。学年が高い児童が伝統的に3学年間の中で仕事を見覚え、聞き覚え、身体で覚えたことを伝え合うのです。

 映画『ALWAYS三丁目の夕日』をとても身近に懐かしく感じる世代の私は、「縦割り」と聞くと不自然な感じを覚えます。遊びはいつも「縦割り」というか縦の社会構造のようでした。いま思えばそれはとても封建的でしたが、色々なことを学んだ気がします。

いま、特に中学受験を考え始めると、放課後は遊びもままならない塾通い。いつも横並びで同学年の繋がりだけが強くなりがちな日常です。縦割りも環境的にある学童保育や小学校内での学童保育的環境が人気を集めていますが、関東学院六浦小学校は始業前(7:40くらいから)の朝遊びから「学童」状態です。

子どもは子ども同士で育ちあいます。縦割りの遊びや活動の中に人間を育てる豊かさがあります。六浦小学校の六浦らしさの一つと言えば、縦割りの状態の中で、子ども同士の、駆け引きや計算のない純粋な心と心の絆、信頼と愛情の深さでしょう。それを子どもゆえの純粋さで経験していくことでしょう。純粋ゆえに時には残酷なこともありますが…。でも、その経験での豊かさだと思います。

行事の度に無垢な心で互いに感じ合い、学び合う「信頼」。学齢の違いを越えての心の通い合い。無心で信頼し合うことの大切さを、お互いに心の中に滲みこませていきます。遠足でも、運動会でも、それが、子どもたちの瞳の輝きになって現われているのでしょう。

成長の中で次第に無垢さを失っていくのは人の定めです。社会に揉まれれば、「契約」という関係をいやというほど経験し、無垢さは憧憬へと後退していきます。大人たちには見えなくなった無垢な心と純粋な世界。そこに繋がりを感じて生きている子どもたち。

毎朝子どもたちと元気な挨拶を交わして、健やかさのお福分けをもらいます。そして、子どもたちの瞳の輝きに、あらためて生きることに必要な「素」を新しく感じるのです。今日も瞳が輝いています。

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