校長の小さなつぶやき
2023.06.15

未来を見つめて(前編)―構成的な学びと非認知能力の育成

校長の小さなつぶやき(18)「未来を見つめて(前編)―」2023.6.15

「未来を見つめて(前編)―構成的な学びと非認知能力の育成」

★教育の特色
関東学院六浦小学校は、伝統的に2つの教育の特色があります。
1つ目。……子どもたちは、未知との出会いの中での「気づき」や「発見」による「知りたい」という気持ちによって自ら伸びていきます。このプロセスを大切にする教育活動を展開していること。
2つ目。……子どもたちの成長には、言語化する力を適切に育むことが欠かせません。自分の中に新しく形成された知識や経験について適切に表現する力を育てる教育活動を展開していること。

★なぜ、「気づき」や「発見」を大切にするの?
子どもたちは、新しい「気づき」や「発見」をそれまでの経験と照らし合わせます。そこで納得する気持ちや不思議や疑問に思う気持ちを抱きます。そこで自分の知識を新たに組み立て直そうという変化が生まれます。有名なフランスの心理学者のピアジェはこうした心の中の変化を「同化」と「調節」と呼び、学習の意義としました。
六浦小学校は各教科での基礎的な知識の習得においても、「気づき」や「発見」を大切にしています。基礎基本の知識だから何も考えずに詰め込むように学ぶ方法も時には必要です。しかし、基礎的な知識の習得の過程でも、子どもたちの内面の変化が大切です。この内面の変化、いわゆる「構成的な学び」を六浦小学校は重視しています。新しい取り組みとしている『私のポケット』での探究的な学習は、これをさらに「子ども中心」にした象徴的な取り組みです。
「構成的な学び」を重視はしますが、もちろん習得すべき知識は習得させていきます。授業の他にICT端末を適宜に活用し、「学びの個別最適化」を可能にして、個別にスモール・ステップ的に学んでいきます。ここでも極力、学んだことを内面で再構成し体系化していく授業や活動を大切にしています。今年度(2023年)から導入したe-learning教材「すらら」は、家庭における授業の予習や復習の学習教材として活用されます。さらに、それを特化して活用する週1時間の『私のパレット』の時間では、自らの学習デザインで学んでいきます。
すららは、登場するキャラクターとの双方向的なやり取りで、主体的な学びへの意欲を喚起される雰囲気で学ぶことができます。全体のマネジメントは学校がリードしますが、すららは日本ではもっとも進んでいる自学教材ですので、子どもたちは家庭学習の中で進みたければどんどん先に進めますし、苦手なところは何度も復習できます。本校の特色である英語授業も、すららの英語教材で文法・語法的な学びのサポートも可能です。

★表現する力の育成はどうしているのか。
自分の気持ちや心に中にあることを適切に言語化できるように、どの教科においても表現する力の育成を大切にしています。表現する力の育成は、論理的に考える力と伝える力を育てることになりますが、一方で、他者の気持ちを理解する力、共感する力や協調する力の礎にも関連します。ひいては、感情のコントロールの高度化にも繋がるものです。学校全体のカリキュラム・マネジメントとしては、学齢に合わせた作文教育をシステム化しています。伝統的な新聞づくりや学校文集もその実践です。

 

★小学校は、「非認知能力」の土台作りで最後の砦(とりで)。
しかし、こうした学び方は時間がかかり、その成果を量数的、数値的に図ること(学力テスト等)では合理的でスピーディーな学習とは言えないところもあります。これは事実です。ただ、「学校」における学びには、「認知能力」と「非認知能力」の2つの大事な観点があり、特に小学校は、後者の非認知能力の効果的な習得にとって、最後の大切な機会(学齢期間)と言っていいでしょう。
六浦小学校では、日々の活動をすべて学習活動として、自分から目標を立てて取り組む姿勢を育て、新しい発想を積極的に奨励し、またその取り組みへの意欲を鼓舞し、同時に周囲との円滑なコミュニケーションを適切にとる力を評価するようにしています。すなわち非認知能力の育成に十分に配慮しています。

★何を考えての方針なのか。
伝統的な六浦小学校の教育方針は、今日の教育課題に合致しています。今日的には、考え方は未来に必要な力の種づくりをするところにあります。
日本は、少子化の急激な進行とAIやICT、ロボットと自動化の加速度的な浸透で、誰もが経験したことのない未来社会を迎えます。特に、AIによる社会のあらゆる活動や構造への変化は、想像をはるかに超えるものになるでしょう。子どもたちはその未来に生きる人として、必要な能力の育成を、特に小学校ではこれまでとは違う学び方、学力観で考えることが必要です。誰かが決めた、与えられる目標で学習や活動するだけでは、未来においては、これまでのような社会的実現や成功に繋がりにくいと考えます。
言われたことで動く、言われたことをする、言われることを待つ…、少々乱暴ですが、与えられた問題をマシーンのように解く…では、主体的な思考が停止し、流れに身を任せるだけになり、未来の社会では自己実現への道がかなり厳しいものになると考えるべきです。能力が高くても、AIに支配されるだけの辛い厳しい現実に直面することも考えられます。
六浦小学校はそんな未来社会の特徴を考え、手間や時間がかかっても、「気づき」が適切に(自発的に)学びの姿勢に繋がることを期待して臨んでいます。家庭においても同様で、親の思いや焦りで答えをすぐに与えたり、逆に子どもが、親の答えを待つようにさせてしまったりでは不味いでしょう。
余談ですが、学習面だけではなく、人間関係形成力の育成面でも同じです。こうすることが合理的だ!と安易に考え、親が子どもの代理で事を処理するようなことでは、子どもが未来に必要な力の育ちを妨げにもなりかねません。

★教育の土台
六浦小学校の特色を特色とすることでの土台が、キリストの教えです。キリスト・イエスが私たちに説き続けている「隣人愛」の精神です。「自分を愛するように隣人を思い、愛すること」です。学びの意義はこの土台の上で真理となります。何のために学ぶのかということをここに結んでいます。
どの時代も変わってはいけない不変の理念に立って、どんどん変わっていく未来社会にたくましく生きていく力の大切な基礎を築くこと。これが、関東学院六浦小学校が謳う、「『のびる』を伸ばす」の意味となっています。


次回、校長の小さなつぶやき(19)は、
「未来を見つめて(後編)―人口縮小社会への備えとして」

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