校長の小さなつぶやき
2023.12.08

朝のグランド遊びは伝統です

「校長の小さなつぶやき」(30)「朝のグランド遊びは伝統です」

 「おはようございます!」と毎朝、雨でも風でも天気に左右されない児童の明るい声。

子どもたちの挨拶や一生懸命に歌う姿、遊びに全力で向かうエネルギーに毎日驚いています。小学校の校長2年目ですが、今も新鮮な感動の一つは朝の自由遊びの光景です。

学校の朝の開錠は、教員が校門ゲートと校舎玄関の鍵を開ける…です。勤務の開始時刻のかなり前に出勤する教員が多く、出勤時が実質の勤務の開始時間になっています。ですから、子どもたちも玄関の外で待つことはほぼありません。そういうわけで、子どもたちで最も早い登校は7時半です。

さて、朝のグランドはどうなっているのか。ブランコの傍の木の下から枝の中を見上げている児童。何かいるの? ブランコで一人、静かに揺られながら周りを見回す児童。何に気づいたの? ボール遊びをする児童たち。学年が入り混じっているね。鬼ごっこは…、見せかけの全速力で追う高学年児童の微笑に、逃げきったのを対等だと勘違いしている低学年児童のドヤ顔。楽しさがあふれています。

 

 ほとんど忘れてしまった自分の小学生時代。誘い合って朝早くグランドで遊んだ思い出の断片はある…けれども、何が楽しくて走り回っていたのか。それは、子どもだったから…くらいの答えしかありません。でも、いま、子どもたちを見ていると、「生きている!」ってことを全身で表現しているのだと感じます。子ども時代は、喜・怒・哀・楽を素朴に示しながら全力で人生の舞台を進んでいきます。

だから、そこには波風体験が必ず起こります。…心配です。でも、波風体験の中で大切な社会性や協調性が育ちます。自発性、感情の抑制などの理性、自省の心や思いやりも芽生えます。むしろ心配なのは、子どもが苦境にいるときの保護者の関わり方でしょう。過度な心配や支援、強い干渉、親の気持ちへの忖度(そんたく)しか残さないような強い誘導。育ちの阻害となりがちです。

 

ところで、2023年11月21日の朝日新聞デジタルの記事です。見出しは、早朝の校庭開放、小学校で広がる 専門家「根本的に必要なのは…」』。 記事は東京の八王子市と三鷹市、そして神奈川の大磯町を紹介していました。(記事中の「……」は、私による省略)

「共働き家庭の増加で、朝の子どもの居場所づくりが課題……登校時間より早く保護者が出勤する家庭では、短い時間でも子どもが1人になってしまう……子どもたちのため、朝の校庭開放などの取り組みが広がり……背景には正社員として働く女性が増えたこと……教員の働き方改革……2年ほど前まで開門は午前8時で、外で20~30人が開門を待って……教員の勤務時間前で、何かあっては困ると門の中には入れない対応……近隣から、道路に出て危ない、うるさいなどとクレームが……昨年からは門を入った所で待たせる形にして……」。

 

 本校の朝遊びは、認めるか否かの論議以前に「伝統」です。議論する余地はありません。しかし、安全管理はどうなっているのか?出勤時間前で子どもが怪我をしたときの責任を誰がとるのか?と…聞こえてきます。であれば、そういう体制の学校を選べばよい。これは無責任ではなく、そこに教育があるという主張です。主張は、本校の信念と私立たる所以です。

どんなに安全を考えていても怪我をすることはあります。が、グランドでしょう。車にはねられることはない。ただ、対人衝突などの危険はあります。関六小では、ルールとモラルを呼び掛けながら自由遊びを見守り、社会的スキルを学ぶ機会としています。関六小の児童がやさしく育つのは、野放図に近い朝遊びがコミュニケーション力の土台になっているからかもしれません。

「転ばぬ先の杖」を整えていく教育が主流です。が、未来社会を考えれば、ルールを自覚的に意識させながら波風体験をさせる教育環境こそ、いま必要なのだと感じます。子どもが自立し、ほんとうに自律するために、波風体験をさせるという覚悟と忍耐が必要です。

関東学院六浦小学校は、今日も元気に朝のグランド遊びからスタートです。

〒236-0037 
横浜市金沢区六浦東 1-50-1
TEL:045-701-8285/FAX:045-783-5342