校長の小さなつぶやき
2025.10.01

六浦小学校の英語教育

校長の小さなつぶやき(43) 六浦小学校の英語教育…今日的な課題の中での本校の前進

 

いま六浦小学校は六浦中・高との連携で、英語の自然な学びを進めています。臆せずに英語を使う気持ち、コミュニケーション意欲の増進を目標に授業を工夫しています。関東学院「六浦」学校群の差別化での特色の一つであった英語教育をさらに実用的に進め、使える英語力の土台作りに力を入れています。もちろん、進学先はどの中学でもアドバンテージとなる英語力も包含するものです。

さて、日本の小学校英語教育の開始はおおよそ2011年。学習指導要領に則っての完全実施は2020年度からです。導入までの長い間、「英語」や「国語」の教育関係者や言語学者、有名な通訳者など様々な識者の間で多くの論議が繰り広げられました。日本語の習得が覚束ないうちの導入は無茶だ、豊かな日本語の習得が先だという国粋的な意見や、勢いを削ぐ否定的な議論も少なくなかったと振り返ります。国際化が進んで英語の習得が必要だと実感していても、小学校では、となると…云々だったのです。議論ばかりが空回りしている間に、近隣諸外国の義務教育学校での導入は進んでいきました。韓国は日本に14年先んじて1997年。中国は2001年。日本は国力の維持に致命的に後れたのでした。さらに日本は、Nativeの教員は**TESOLでの学位を持っていても教壇には一人では立てない制度を固めていき、自ら進化を止めたのです。「失われた〇〇年」は経済面のみならず教育面でも同じなのです。

いま日本の小学校の英語教育が抱える大きな悩みは、公立・私立問わず、子どもたちが「高学年になるにつれて学習意欲の維持が難しくなる」ことです。英語教育導入前は議論だけが長く、文科省による小学校教員対象の研修は付け焼刃のようなものでした。

小学校では話すことが優先とは言っても英語は「語順が命」ですから、学習指導要領では、5,6年は統語論的に体系的な学習が組まれています。算数のような段階的な学習で「文法」の理解に重点があります。週1~2時間、年間35~70時間です。そんな学習方法では、生きた言葉の習得…目標自体に無理があります。さらに子どもは日本語では助詞の「が・の・に・を…」を使いこなし、ぐちゃぐちゃな語順でもコミュニケーションが出来る日常です。英語は面倒くさい、何で?と、つまずくわけです。

低学年から中学年までは、歌や遊びを通しての英語への「慣れ」で進められます。しかし、高学年で論理的な思考力が深まると、意味のないオウム返しの英語は…いいんじゃねぇ…となるわけで、そこに必然性の感じない統語論的な学習が始まる。結局、授業を通して英語嫌いになってしまうのです。

 

六浦小学校では「英語学」的な学びでの強化ではなく、内容面にインセンティブを高める学びを強化します。英語で表現する必然的な環境を学習活動の中に創り出すこと、これが特に高学年での英語の授業に必要な点です。いろいろな学習や活動で得ている知識や経験を、英語でも話したい、説明したいという欲求を感じさせるようなコンテンツでの学び。その過程を創っていくこと。これが重要なのです。

隣の六浦中が教授法をCLIL(Contents and Language Integrated Learning)にしているのはその点からです。六浦小学校もこの2年半で学齢に応じてその方法での学び方が整えられつつあります。

(AERA Mook特別号 『AERA English 英語に強くなる小学校選び2026』(2025年7月31日発売)に取り上げられました)

 

子どもたちは言葉を覚え始めの頃、「見て!見て!」をよく発します。これは、言葉の習得とともに自分の内面で概念化と認識が始まり、その変化として起っていることやそれによる成長の実感を承認させたくなる気持ちからです。この心理はどの年代にもありますから、その学齢の特性を踏まえ、コンテンツをベースとした学習活動として英語学習を調えることが重要です。もちろん授業の目的や動機が英検級を目指すとなれば、合理的にそういう授業もできます。しかし、「級」ありきでの統語論的学習だけでは、これまでの英語教育からの進化はありませんし、学習初期ではつまずきの原因にもなります。

 

 

関東学院六浦中学校:CLILは2015年から。横浜の中で先駆です。(使用テキストは、National Geographic社の関連の教科書会社のものです。六中での導入は早く深い取り組みのため、Native教員の1人がその編集協力者に名を連ねています。テキストは国内大手の英会話学校でも中高生用に採用されています。)六浦中学は英語教育の一つの結果として、日本実用英語検定協会から中学校団体賞の『米国大使賞』を今年も連続で受賞しています。また、六浦高校は、特色である普通科GLE(Global Learning in English)コースのカリキュラムに、海外進学が可能となるIELTS 6.5の取得を目指す学習法を高校1年生から取り入れています。実用的で論理的な英語運用力を鍛えることが目的です。近未来の日本の変化を考え、卒業後の進路でも国際化を推進しています(2025年度の海外進学者は卒業生197名中8名)。六浦高校は、日本でのIELTSを運営するIDP Education<本社:オーストラリア・メルボルン>から2025年2月、神奈川県初の「IELTS推進校」としての認定を受けました(全国で4番目。2025年9月現在、全国で8校)。

**TESOL:国際的に認められている「英語を教える能力を証明する資格」のための学問領域、「Teaching English to Speakers of Other Languages」

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