校長の小さなつぶやき
2025.05.19

未来から2025年を眺めて

校長の小さなつぶやき(40)「未来から2025年を眺めて」

「校長の小さなつぶやき」は校長の思うこととは言え、独善と先入観に満ちたものであったりしてはいけない、と自覚の上での発信してきています。が、今号はややそのきらいを強くするかもしれません。あらかじめ、おゆるしを乞うものです。

自分の子育てを振り返ります。子育てに一生懸命に関わったとは言えないところも多々あって、振り返る資格がないかもしれませんが、ただ一つ確信を持って語れることは、親としては、人一倍、未来を現実的に捉えるように考え実践してきたということでしょう。子どもが小さい時には未来は遠いと考えがちです。または、まだまだ無縁として現実の諸事情に近視眼的に囚われがちですが、子どもが生きる時代は予想を超える変化の時代です。

「この科目の点数がどうだ?というよりは、未来を考えると…」などと言っていました。すると、「足元を見ていないのでは…」と意見のすれ違いも度々起こりました。でも、教育と時間(タイムライン的意識)と未来展望との捉え方が重要性なのです。とにかく…未来から考えようとしたことだったと思います。人は、何かを予想はできてもその予想での体感が現実に無いから甘くなる…それで、つぶやきます。

★ 小学生が社会に出る頃…10~15年後を想像します。業務効率化でのDXはAI・生成AIの発達によって格段に進み、あらゆる業務で合理化と生産性が加速しています。社会の「ICT化」や「IoT化」は当たり前で、その言葉もほぼ死語になっているでしょう。ロボットも社会の隅々まで浸透しているし、ネット通販がさらに普遍化している。今ある仕事も内容が変化する。減る仕事に無くなる職業、新しく生まれる職業。変わる街並み。

一方で、日本は生産年齢人口の減少が止まりません。直近で日本総研のインターネット版リサーチ・アイ(2025/5/15)によれば、2024年国内で生まれた日本人の子どもは68万 6千人。前年比で5.6%減。2015年度以降の平均減少率の4.2%を減増で、特殊出生率 も前年の1.20から1.15となったとありました。

歴史的には人口縮小は社会(経済)の発展とともに訪れる人類の宿命です。誰の責任でもありません。悲観せず冷静に社会の変容と真摯に向き合い、個として、地球規模で未来を眺めて、未来に備える適切な学びを考えることが教育や子育てに必要なことです。

 

★ 世界標準となる誰も経験したことのないDX化とロボット化。生成AIを活用する徹底した合理化で「人が発揮するべき力」や「求められる仕事への対応力」が変わります。人には、AIにはできない「自律性(自律的決断力)」や「創造性(イノベーション力)」がますます求められるようになります。その自律性を下支えする「暗黙知」、人間特有の力。経験や勘、そして社会性から学ぶ力です。これを子どもの頃から豊かにすべきでしょう。

そこにじわじわと進行する人口縮小社会。生産年齢人口の激減による国内雇用のグローバル化。すでにそうなってきていますが、経済の発展と社会の安定のために、外国の人々の参画と貢献への期待は高まります。

DXと生成AI での合理化の進行、仕事の変容、そこにグローバル化の波。「暗黙知」や「自律性」を高めるための子どもの頃からの学び、そして協働することができるコミュニケーション能力の育成は、これまでの学習観だけに縛られていては難しいと思います。

 

★ 「未来から眺めるべき」という根拠は、当然ですが過去と現在にあります。ですから現実を見るべきです。日本政府は、人口縮小に関して入国管理法の改正で対応を進めてきています。大きな発端は2008年の「留学生受け入れ30万人計画」からと考えます。2019年に30万人を超え、留学修了者が社会での即戦力「中核人材」として、日本国内で容易に就職ができるように入管法(出入国管理法)が改正されました。2023年、「高度外国人材」に関する入管法も改正されました。家族帯同での国内在留の無期限化が実質的に可能になりました。2024年の技能実習制度の廃止で「特定技能1、2号」の創設。2号は在留年限の上限が無く家族帯同も認められるようになりました。また同年には留学生受け入れの目標があらたに40万人と発表されました。すでに40万人に達する勢いです。

そして決定打! 2025年1月1日、「外国人起業活動促進事業」が全国で施行されました。日本国内での起業を目指す外国の人に、資本金などの準備期間として2年間の滞在を認める「スタートアップビザ」の発給が始まりました。諸改正が表層化するのは10年を待たないかもしれません。

 

★ 未来の教科書では、2019~2025年を新しい時代への幕開けの時代と見なし、2025年を「令和の開国」などと呼んでいるかもしれません。生成AIが浸透し、国内グローバル化が進んだ、いまとは全く違う未来から今を眺めるのです。

★ 教科で学ぶ内容から作問された問題を正確緻密に速やかに解(回)答する力だけが、未来を生きるための力でしょうか。小学校は子どもたちにどんな力を付けることが大事なのでしょうか。どんな学びをどんな学び方で、どんな視座で提供すべきなのか・・・です。言えることは、未来に必要な力を考えれば、「学び」に関する従来の「学力観」で狭く学びを限定し、「自律力」に繋がる豊かな感性での学びを避けるのではなく、潰すべきではないということです。

 

★ 六浦小学校には伝統的に、日頃の授業と活動の中に「内発的動機」と「自分で決める力」を高め、感性を育てる仕掛けがいっぱいあります。ですから、多くの小学校で禁止されている朝遊びや放課後遊びをふんだんに奨励しています。もちろん怪我もします。しかし、それ以上に気づきや発見が多い。また、遊びの中からも縦割りの環境が自然に生まれ、共同する力の種を自分たちで育てています。そして、それらの気づきや発見を言語化する確かな学びを展開しています。視野を広げる国際理解の機会もあります。タイ王国のコミュニティーとの長い年月での交流があり、また接続する六浦中・高からの留学生との交流授業などもあります。その六浦中・高にも主体性を育てる教育の仕掛けが数々あります。

★ 六小も六中・高もこの数年、自律性の伸長にさらに力点を置いています。両校に共通することは、世界の中で自分を捉え、自分の未来を眺める教育観での教育です。特に小学校は、学校での「過ごし」の全てを通して豊かな感性と創造性そして自律性を伸ばすことが重要だと考えています。両校の英語教育の特色も深い意味でそれに関係します。

★ 横浜の南端、風光明媚な金沢八景で、未来から2025年を眺めています。新しい時代への備えについて考え、新しい「学び」と「学び方」を実践していきたいと思います。(2025年春 学校長)

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